理想の恋愛関係
「……はい」


数回の呼び出し音の後、疲れた様な声が聞こえて来た。


……出てくれた!


「ゆ、優斗君……」


ようやく連絡がついた安堵と、これから言われる事の不安で緊張が高まる。


「優斗君、今何時だと思ってるの?」


感情が高ぶって、つい責めるような口調になってしまった。


すぐに後悔したけれど、優斗君から返って来た返事は私の言い方に怒っているというより、ただ困惑しているといった様子だった。


「え? 何時って……8時半だけど」


全く悪びれないその口調に、今度は私が戸惑った。


すぐに返事が出来ないでいると、いつもより早口で優斗君が言った。


「……用件は何ですか? 今、出先なんで急ぎじゃないなら今度にして下さい」

「……」


こ、これはもしかして……信じられないけれど……すっぽかされたと言うより、約束自体を忘れられていたという事?


迷惑に思われているとかそんなレベルじゃなく、存在自体を忘れられていた?


まさかの現実に呆然としていると、優斗君の怪訝そうな声が聞こえて来た。

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