理想の恋愛関係
「かなり緑さんに振り回されていたんで……突然呼び出されたり、買い物やパーティーに強引に同行させられたりで」


どうやら優斗君の中での私の印象は、破談になる前のものが大部分を占めているようだった。


しかも悪印象。


確かに優斗君の表向きの優しさに甘えて、私もかなりワガママだったかもしれない。


それでも私にも言い分は有った。


「確かにそうだけど……一緒に買い物行ったり、パーティーに出るなんて付き合ってたら普通の事じゃないの? それに突然呼び出してたのは、優斗君が約束するのを避けてたからでしょ? 私が強引に誘わなかったら会う機会は無かったくらいよ」


当時、私は優斗君の本心なんて何も知らないで近い将来結婚するんだと信じていた。


優斗君を自分の恋人だと思っていた。


だから距離を縮めるよう行動していて、それが優斗君にとって迷惑な事だなんて考えもしなかった。


優斗君は私の主張を聞いて、何か考える様に目を伏せた。


それから私に視線を移すと、少し気まずそうな表情をして言った。


「確かに緑さんの言うとおりですね……俺の態度も悪かったです」

「え……」


驚きのあまり言葉を失った。


優斗君がこんな風に言ってくれたのは、1ヶ月の契約が始まってから初めての事だった。


いつも優斗君との間に有る壁が無くなったような気がして、私は気持ちを伝えたくて身を乗り出した。


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