理想の恋愛関係
「何か有ったの?」


書斎に入ってすぐにそう聞くと、兄はやけに上機嫌な顔になり言った。


「お前に見合いの話が有るんだ」

「……は?」


予想もしていなかったその言葉に私はポカンと口を開けてしまった。


突然何を言い出すのだろう、この兄は。


私の心情に気付かない兄は、今度は同情する様な目で私を見ながら言った。


「二ノ宮家との縁談が破談になってから、お前の様子がおかしかったから心配していたんだ」

「……おかしいって?」

「塞ぎ込んでると思えば、妙に楽しそうにしたり、おまけに酔っ払って怪我までしてただろう……破談がよほど堪えたんだな?」


兄は、何もかも分かっているとでも言いたそうな顔をしているけれど……全く検討違いな話でこっちが驚いてしまう。


確かに優斗君の事で悩み情緒不安定になっていたけれど、だからと言って別のお見合いなんて有り得ない。


考えられない。


「その話は断って。誰とも会う気は無いから」

「どうしてだ? 今度の相手は間違いないぞ」

「相手の問題じゃなくて、今はそんな気分になれないの」

「誰か付き合ってる相手がいるのか?」

「……どうして?」

「さっきも言ったが、お前の様子がおかしいからだ」

「……そんな相手、いないわ」


私はそう言うと、まだ何か言いたそうにしていた兄を残し部屋を出た。
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