理想の恋愛関係
「緑、溜め息吐いてないで早く支度しなよ」

「……今行く」


鈴香に急かされて、私はやる気の無い返事をした。


今日は、鈴香の知り合いの開くパーティーに参加する事になっていた。


そういう場で知り合った人から仕事を貰える事も有るから、半ば営業活動なんだけれど、どうも気分が乗らなかった。


恋がダメになったからと言って仕事まで疎かになるなんて社会人失格だと思いながらも、気付くと溜め息が漏れてしまった。



そんな中でも、人前に出ればそれなりに作り笑いくらいは出来る。


仕事に繋がりそうな人が居れば、愛想よく話しかけた。


「緑、結構声かけられてたじゃない」


しばらくしてから合流した鈴香は、いつになく上機嫌で言った。


「何かいい事有った?」


そう聞くと鈴香はニヤリと笑った。


この笑い方は……良い仕事に繋がりそうな出会いが有ったのだろう。


長年の経験で聞かなくても分かった。


「そろそろ帰る?」


ある程度挨拶も済んだし、帰っても問題無いと思った


鈴香もそうねと言いながら、辺りを見回す。


その直後、

「げっ……」

鈴香は品の無い声を上げ、私の腕を引っ張った。


「何?」


私も眉をひそめながら、鈴香の視線を追い、そして呟いた。


「……最悪」


そこには、もう不愉快な記憶しか残っていない元カレ、神原龍也が立っていて何か言いたそうな顔で私を見ていた。
< 94 / 375 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop