理想の恋愛関係
龍也はゆっくりと私達に近付いて来た。


高価なスーツを着こなした姿は様になっている。


でも私は不快感でいっぱいになった。


彼女がいながら私に近付いて来ただけでなく、私への腹いせに酷い噂を流した卑怯な男。


本当に腹が立つ思い出しかない。


わざわざ近付いて来るなんて何の用だろう。


今更話す事なんか無いのに。



「緑、鈴香さん、久しぶりだね」


目の前まで来た龍也は、爽やかな笑顔を浮かべながら言った。


以前の事など忘れ去ったような態度。


何を考えているのだろう。


「神原さん久しぶり。こんな所で会うとは思わなかったわ」


鈴香が微妙な顔をしながら言う。


「ああ、二人を見た時は驚いたよ」


私達は共通の知り合いも多いのだから、偶然会っても不思議じゃない。


私が驚いたのは、何事も無かったのように話しかけて来れる龍也の神経の方だった。
< 95 / 375 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop