理想の恋愛関係
「緑、どうしたんだ?」


私が一言も発しない事に気付いた龍也が、怪訝な顔をした。


「……別に」


龍也相手に怒りを伝える事も馬鹿らしい。


素っ気なく言うと、龍也はなぜか哀れむ様な顔をして言った。


「大変だったみたいだな。事情は聞いたよ」

「……事情?」


眉をひそめながら聞き返すと、龍也は同情するような……私から見ると胡散臭い顔をして言った。


「婚約寸前で振られたんだろ? 大騒ぎになって相手は会社も失ったとか」

「な、何で龍也がそんな事知ってるわけ?!」


思いがけない言葉にカッとなって言うと、龍也は面白そうな顔をした。


……私を馬鹿にしに来たのかもしれない。


こんな男、まともに相手にしちゃいけない。


「鈴香、帰ろう」


そう言い龍也に背中を向けて立ち去ろうとした。


けれど、


「この前、その見合い相手に会ったよ」


龍也の言葉に私は足を止め、勢いよく振り返った。
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