今日私は死にました


「今更だけどあのサイトのチャットにいたのはどうして?」



「利用したのは初めて。なんとなくという名の運命って言われたら嬉しいでしょ?」



「そうだけど…。本当の理由あるでしょ?」








「ルイに会う前は僕もいつ死んでも構わなかった。いつでも死んだ母さんの所に逝こうと決めていた。けどこんな僕でも何か役に立てることがあるかなって。その代わり良いだけのこととは限らない。倫理から外れたことでも構わなかった。そこで視野が広いネットに飛び込んだ。



ルイの願いがまさに僕と同じで運命だと思ったんだ。
絶対何がなんでも叶えてあげようと正義感を持った殺人者になるところだけどね。」





笑いながら、出会った日の文字や初めての電話の声を思い出す。
運命でも偶然でもなんでも良いよ。



今、こうして二人が笑っている。






「他の人を絶対抱かないでね。」


「お金が貯まったら今の店は引退して、今度は僕が経営するから今より女性と出会うことはかなり少なくなるよ。」



「何をするの?」















「正直諦めていたけど孤児院を作りたいんだ。愛情を求める子供達の新しい家を作る。ずっと夢だったんだ。」










「必ず実現して。」



「大丈夫。力強い味方も出来たし。だからもう少し我慢してね。」



「一生一緒にいるのに、何を我慢するというの?頑張ってね。」

















彼の夢は、私の夢でもある。



お互いの温もりを信じ、お互いの愛情を信じ、二人の未来を二人で作り上げる。









―――……そして











彼の夢は、たった五年後に実現する。



彼は27歳、私は31歳。



親に捨てられたり死別したり、何らかの事情で独りになってしまった子供達の家を彼は本当に造り上げてくれた。






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