今日私は死にました
「きっと気付かない間に【何か】あったんじゃないかな。」
先生の髪の毛は白髪が多かった。約三ヶ月二週間に一回は通っていたのに気付きもしなかった。
「薬を変えてみようか、デパスより少し弱めのものを。デパスは人によるけど依存率が高いんだ。思い込みも含めて薬が無きゃ生きていけないと思ってしまう。」
「…………はい。」
相づちの無い会話は話す気が無くなると雅巳君が言っていた。
でも先生、私死にたいんです。そう話してしまうとまた白黒の世界に戻ってしまいそうで怖いんです。
「ルイさん。」
「………はい?」
「ハルシオンとロヒプノールとミンザインをアルコールで流し込んで一日が終わる人も中にはいる。もっともっと強い薬を何錠も飲んでそれでも効かない人は沢山いる。本当に効くのは薬では無く、その人に必要なのはその人の【何か】なのかな。」
「【何か】……。」
「僕の【何か】は仕事が終わった後の自宅に帰る外の匂いなんだ。変だろ?その匂いがたまらなく好きなんだ。幸せだと安心する。」
「へぇ……。」
「ルイさんも安心するような幸せを見つけたのか、見つかりそうなのか。」
幸せなら此処には来ていないと思ったが、頭に浮かんだのは電話帳に登録した雅巳君の名前。
生きていけないこの世の中、彼が私を殺してくれると言ってくれたことですなんて、言えるわけないよ。