明日の果て
 静かにそこを通り抜けようと、足音を忍ばせる。

 そんな彼の耳に、微かに話し声が聞こえた。

 男たちが争っているような音……素早く通り過ぎようとしたが、何故か心臓が大きく踊った。

 それは何かに反応するように血液を勢いよく流動させる。

 見てはいけない! 心の中で何かが叫ぶ、見れば後戻りできなくなる──そんな感覚に囚われながら、警告した心の声は虚しく剛の横を素通りした。

「マジかよ」

 そこにはやはり、あのジェティスという男がいた。
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