明日の果て
*その傷
アパートに戻った剛は、肌寒い部屋でしゃがみ込んだ。
背後に気配がして、溜息を漏らす。
「まだいたのか」
「ねえ、どうして?」
涙で腫らした目は充血し、尚も涙が溢れそうだ。
「ごめん。ホントに」
「それじゃわかんないよ」
震えた声を絞り出す。
「言えないんだ。ごめん」
真里は丸まった背中をしばらく見下ろしていたが、ふいにドアの閉まる音が響いた。
追いかけたい衝動にもかられたが、それをすれば自分の心に嘘を吐く事になるのは明らかだ。