明日の果て

 その考えは見事に甘かったのだと、つくづく実感した──

「1年経っちまった」

 部屋でがっくりとうなだれる。

 ここまで執拗に探している事に自分でも驚きを隠せない。

「こりゃ一生のライフワークかな」

 自嘲気味につぶやいた。

 剛自身、今の生活に不満がある訳じゃない。

 むしろ幸せな世界で生まれたと感謝している。

 しかし、出会ったものが大きすぎた──両手では抱えきれないほどの世界は、剛にとって麻薬のように「もっと欲しい」と手を伸ばす。

 全てをなげうってでも手に入れたい、探し出したい。

 それは適わぬ夢だ、生きていくには働かなくては……。


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