明日の果て
「いて……」

 視線の端に、街灯に照らされた血が見える。

 なんだろう──痛いけど、酷い痛みじゃない。

 まさか、真里がここまで俺を想っていたなんて考えもしなかった。

「っ俺なんか、のために」

 俺は、真里にここまで想ってもらえるほどの人間じゃない。

 願わくば、願わくば、俺を殺した犯人が捕まりませんように……。

 剛は目の前に転がるナイフの柄を拭うように、血に染まった手を強く滑らせた。
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