明日の果て
「ホラーが平気になったのも、彼のおかげ?」

 剛の表情を窺うように、ゆっくりと問いかける。

「う……」

 的を射抜かれ、剛は後ずさった。

「あれは誰? 正直に答えて」

 答えられるハズがない、剛だって知らないのだ。

「助けて神様」と祈りたい気分である。

「まあいいか、どうせ最近マンネリ化してたし。これを機にスッパリとね」

 長い沈黙のあと、彼女が切りだした。

「え……えと、おい?」

 彼女がさっぱりと言い放った言葉に呆然としていた剛が、部屋に帰ると彼女はいなくて、恵美子が今までここに置きっぱなしにしていた荷物までが姿を消していた。

 こんなことで剛は彼女をなくした。

「信じらんねぇ、人間でもない男のことでふられた」

 妙に冷える部屋で剛は立ちつくしていた。

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