明日の果て
 ただ不思議なのは、ここに来てから寝ていても幽体離脱しなくなった。

 デイトリアの側にいるのと、この部屋に特殊な何かを施しているかららしい。

「見せろ」

「あ、うん」

 冷蔵庫から2人分の飲み物を持ってきたデイトリアが発し、剛は本を少し右にずらした。

 曲がりなりにも、助手という形で同居している剛に彼女は給料を払っている。

 家賃や光熱費は負担してもらい、払うのは食費のみだ。

 問題といえば、自分で税金を払わなければいけないという点。

 彼女はフリーの翻訳家で、会社に勤めている訳でも会社を興している訳でもない。

 そんな人間(?)の助手だから当然ではあるが、今までは会社がやってくれていたので面倒このうえない。

 剛は、デイトリアの授業を受けながら部屋の隅々に目を通す。

 別に黒が好きって訳じゃないのか……と、の横顔を見つめた。
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