明日の果て
*感情
剛が食べ物のいい香りに誘われて目を覚ますと、何やら玄関の方が騒がしい。
目をこすりながら部屋の戸を開いた。
隙間から聞こえてくるのは男の声──誰かがデイトリアに詰め寄っているようだ。
「どうしてなんだ! 俺の気持ちはわかっているはずなのに」
「私も考えは伝えたはずだが」
少し興奮気味の男をよそに、デイは至って冷静に応えている。
剛はドアの隙間を広げてこっそり覗いた。歳の頃は28歳くらい、ややがっしりした体格だ。
「どうしてあんな男を部屋にいれるんだ!? 俺がいくら誘っても食事にも行ってくれないのにっ」
剛と目が合った男は、さらに興奮してデイトリアに詰め寄った。