Blue sky ~ 記憶 ~
丘の上には誰かの人影が見えた。
 
 
俺は気付かれないようにそっと近づく。
 
 
 
……誰だ?
 
 
そう思い、俺は目を凝らしてその人影を見る。
 
 
 
「……嘘だろ。」
 
 
 
俺は思わずそう呟いてしまった。
 
 
 
そこで俺が見た人は、まぎれもない……
 
華音だった。
 
 
 
「………華……」
 
 
話しかけようとしたが、俺は言葉を止めた。
 
 
 
…もうあいつには構わないと決めたじゃねぇか。
 
話しかけなかった理由は、それだけではなかった。
 
 
俺が話しかけるのをやめた一番の理由は…
 
華音がいつもとは違ったから。
 
 
あの鋭い目つきではなく、悲しそうに遠くを見つめていたからだった。
 
 
 
「………?」
 
 
 
しばらくその状態が続いた。
 
 
 
 
ぽたっ…
 
 
 
「………!?」
 
 
不意に華音の目から一粒の涙が溢れた。
 
 
 
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