Secret Lover's Night 【完全版】
仕事に出る恵介を二人で玄関まで見送り、バイバーイと手を振る。
恵介は夜の言葉通り千彩を連れて行こうとしたのだけれど、甘え癖の強い千彩が離れなかったのだ。
「今日は何するん?はるお仕事は?」
ペタペタと付き回り、千彩が後ろから話し掛ける。当の晴人は、洗濯機を回したり、洗い物を片付けたりと忙しなく動いていて。
「ねー、はるー?」
服の裾を引いても「後でな?」と動きを止めない晴人に、千彩は頬を膨らせドスンとソファへ腰を下ろした。
「そんな顔せんと。ほら、TV点けたるから。な?」
ポンポンと頭を撫で、手にしたリモコンを渡してやる。
くるくるとチャンネルを変えても、どこも情報番組ばかりで頬は膨らむ一方だ。アニメチャンネルでも入れるか…と、晴人はやはり甘さを見せる。
昼食の下準備を済ませた頃にちょうど洗濯機が完了を告げるアラームを鳴らし、パタパタと脱衣所に駆け込んで手早く中身をカゴに移す。
そして、思う。俺は主婦か!と。
そんな晴人の思いはお構い無しに、やらなければならない家事はまだ残っているわけで。ふーっと一つ息を吐いて、カゴを片手にバルコニーへと出た。
「うわっ…あっつ…」
7月ももう後半。梅雨空から一転、晴れ渡った空には日差しを遮る雲の姿は少ない。
蝉の声と夏休み中だろう子供達の声が混じり、普段静かなマンションの周りは賑わっていた。
本来ならば高校生でもおかしくはないだろう千彩は、ソファの上で膝を抱えて丸まっていて。
その姿を「そういや体育の授業であんな格好して座ってたな…」などと思いながら呑気に見つめていると、それに気付いた千彩が嬉しそうに駆け寄って来た。
「どした?」
「ちさも!」
「ん?手伝うてくれるん?」
えへん、と胸を張る千彩の頭を撫で、カゴの中から数枚のタオルを手渡す。
「じゃあ、それちぃの担当な?」
「はーい!」
元気良く返事をした千彩が、パンッとタオルを広げた。
それに頬を緩ませながら抱きしめたい衝動に駆られるけれど、抱き締めてしまえば、そのままどうにかしてしまいそうで。理性と欲望の狭間で揺れながら、何とか自分を保つ。
「はるー、今日はお出かけするん?」
「んー…あぁ、せやなぁ」
「スーパー行く?プリン買ってー」
「プリンかぁ。干し終わったら材料買いに行こか」
「材料?」
「俺作ったるから、ちぃも手伝ってくれる?」
「うん!」
晴人の提案に、千彩の笑顔が輝く。
料理を教えてやるのも悪くない。と、擦り寄る千彩の髪を撫ぜながら晴人は微笑んだ。
「それ干し終わったら、着替えておいで」
「えー?さっき着替えたよ?」
「下、それやっぱ短すぎるわ。もっと長いのあったやろ?」
「こんなもんやーってけーちゃん言ってたよ?」
「けーちゃんはけーちゃん。俺は嫌なの」
「んー…変なのー」
不思議そうに首を傾げる千彩の頭をわしゃわしゃと掻き回し、はぐらかすように晴人はTシャツのシワをパンッと伸ばす。
あかん…ええおっさんが何言うてんや。独占欲丸出しやないか。
そう自嘲するも、ストッパーを外してしまった以上、その想いはコロコロと転がり行くだけで。
晴天の匂いを勢い良く吸い込み、少し冷静になれ…と、改めて自分に言い聞かせた。
恵介は夜の言葉通り千彩を連れて行こうとしたのだけれど、甘え癖の強い千彩が離れなかったのだ。
「今日は何するん?はるお仕事は?」
ペタペタと付き回り、千彩が後ろから話し掛ける。当の晴人は、洗濯機を回したり、洗い物を片付けたりと忙しなく動いていて。
「ねー、はるー?」
服の裾を引いても「後でな?」と動きを止めない晴人に、千彩は頬を膨らせドスンとソファへ腰を下ろした。
「そんな顔せんと。ほら、TV点けたるから。な?」
ポンポンと頭を撫で、手にしたリモコンを渡してやる。
くるくるとチャンネルを変えても、どこも情報番組ばかりで頬は膨らむ一方だ。アニメチャンネルでも入れるか…と、晴人はやはり甘さを見せる。
昼食の下準備を済ませた頃にちょうど洗濯機が完了を告げるアラームを鳴らし、パタパタと脱衣所に駆け込んで手早く中身をカゴに移す。
そして、思う。俺は主婦か!と。
そんな晴人の思いはお構い無しに、やらなければならない家事はまだ残っているわけで。ふーっと一つ息を吐いて、カゴを片手にバルコニーへと出た。
「うわっ…あっつ…」
7月ももう後半。梅雨空から一転、晴れ渡った空には日差しを遮る雲の姿は少ない。
蝉の声と夏休み中だろう子供達の声が混じり、普段静かなマンションの周りは賑わっていた。
本来ならば高校生でもおかしくはないだろう千彩は、ソファの上で膝を抱えて丸まっていて。
その姿を「そういや体育の授業であんな格好して座ってたな…」などと思いながら呑気に見つめていると、それに気付いた千彩が嬉しそうに駆け寄って来た。
「どした?」
「ちさも!」
「ん?手伝うてくれるん?」
えへん、と胸を張る千彩の頭を撫で、カゴの中から数枚のタオルを手渡す。
「じゃあ、それちぃの担当な?」
「はーい!」
元気良く返事をした千彩が、パンッとタオルを広げた。
それに頬を緩ませながら抱きしめたい衝動に駆られるけれど、抱き締めてしまえば、そのままどうにかしてしまいそうで。理性と欲望の狭間で揺れながら、何とか自分を保つ。
「はるー、今日はお出かけするん?」
「んー…あぁ、せやなぁ」
「スーパー行く?プリン買ってー」
「プリンかぁ。干し終わったら材料買いに行こか」
「材料?」
「俺作ったるから、ちぃも手伝ってくれる?」
「うん!」
晴人の提案に、千彩の笑顔が輝く。
料理を教えてやるのも悪くない。と、擦り寄る千彩の髪を撫ぜながら晴人は微笑んだ。
「それ干し終わったら、着替えておいで」
「えー?さっき着替えたよ?」
「下、それやっぱ短すぎるわ。もっと長いのあったやろ?」
「こんなもんやーってけーちゃん言ってたよ?」
「けーちゃんはけーちゃん。俺は嫌なの」
「んー…変なのー」
不思議そうに首を傾げる千彩の頭をわしゃわしゃと掻き回し、はぐらかすように晴人はTシャツのシワをパンッと伸ばす。
あかん…ええおっさんが何言うてんや。独占欲丸出しやないか。
そう自嘲するも、ストッパーを外してしまった以上、その想いはコロコロと転がり行くだけで。
晴天の匂いを勢い良く吸い込み、少し冷静になれ…と、改めて自分に言い聞かせた。