Secret Lover's Night 【完全版】
無言のまま、重苦しい時間が流れる。メーシーが出てすぐに恵介も所長に呼ばれて出てしまい、今この部屋には、吉村と晴人の二人きり。
「吉村さん、あの…」
何か言葉を掛けようにも、その先が続かなくて。きょとんとする吉村に、スッと灰皿を差し出した。
「吸われます?」
「あっ、あぁ。すんません」
「…いえ」
カチリと火を点け、肺いっぱいに不純物を吸い込む。落ち着かない…と、眉間にシワを寄せた時だった。
「HALさんは、おいくつなんですか?」
不意に問われ、器用に煙りを詰まらせた晴人がゲホゲホと噎せる。それを心配そうに見ながら、吉村は白い煙りを吐き出した。
「千彩とは…どうゆう?」
尤もな質問だろう。けれど晴人は、それに対する明確な答えを持ち合わせていない。
一度ギュッと目を瞑り、意を決して言葉を押し出した。
「僕の年齢は28で、千彩とは…一緒に暮らしてます。一週間ほど前に、歌舞伎町で知り合いました」
「ほんなら…千彩の客…ってことですか?」
「いや、そうじゃないです。たまたま泣いてる千彩を見つけて…それで自分の家に連れて帰ったんです」
「…え?」
「黙って連れて帰ったから、店の人は探してるかもしれません。すみません」
俯く晴人に、吉村はバンッとテーブルを叩いた。
「ほな、千彩を助けてくれはったんですね?ありがとうございます!」
「いや…そんなつもりはなかったんですけど…」
「いやいや!恩人ですわ!ありがとうございます!その上一緒に住まわせてもろてるやなんて…えらいお世話になってすんません」
恩人だと手放しで喜ぶ吉村を見て、晴人の想いは余計に複雑に絡まってくる。
疚しいことはない!…とは言いきれないけれど、まぁ、まだ抱いてはいない。けれど、気持ちの面ではどうだろうか。
まだ17歳の、あんなにも真っ白な少女相手に、手放したくない、自分だけのものにしておきたいと願うこの気持ちは、本当に疚しくないと言えるだろうか。
頭を悩ませる晴人に構わず、吉村は言葉を続ける。
「俺ね、ちょっと仕事で長い間家空けてもうて。久しぶりに帰ったら、預けてた家に千彩がおらんのですわ。誰に聞いても知らん言いやがるし、地元帰っても見付からへんし…ずっと探し回ってたんですよ」
「そう…ですか」
「いやぁ、ええ人に助けてもろて良かった。これで漸く地元に…」
吉村の言葉を遮るように、タイミング良くノックの音が響く。それに慌てて反応したのは、言わずもがな晴人で。
「いい?姫連れて…あっ!姫待って!」
「はるここー?」
顔を覗かせた千彩の姿を見て、ガタンと二人が立ち上がる。
「ちー坊!」
先に駆け寄って抱き締めたのは、その姿が現れるのを今か今かと待ち焦がれていた吉村だった。
「ちー坊!ごめんな?ごめんな?辛い思いさせて悪かったな。許してな?」
「…え?」
戸惑う千彩の頭を撫でながら、吉村は感極まって泣き始めた。それをただ眺めているだけしか出来ない晴人は、嗚呼…と声にならない想いを吐き出す。そして、そんな晴人を眺めるメーシーも。
「ちー坊…俺の可愛いちー坊。お前は俺の宝物やで。もう絶対離さへんからな」
「おにー…さま?おにーさま!」
「せや。おにーさまや。お前を世界で一番愛してるおにーさまや」
腕の中の千彩が、何度も「おにーさま」と呼びながら同じように泣き始めて。これはいよいよダメだな…と、晴人はガックリと肩を落として椅子へ腰掛けた。
「吉村さん、あの…」
何か言葉を掛けようにも、その先が続かなくて。きょとんとする吉村に、スッと灰皿を差し出した。
「吸われます?」
「あっ、あぁ。すんません」
「…いえ」
カチリと火を点け、肺いっぱいに不純物を吸い込む。落ち着かない…と、眉間にシワを寄せた時だった。
「HALさんは、おいくつなんですか?」
不意に問われ、器用に煙りを詰まらせた晴人がゲホゲホと噎せる。それを心配そうに見ながら、吉村は白い煙りを吐き出した。
「千彩とは…どうゆう?」
尤もな質問だろう。けれど晴人は、それに対する明確な答えを持ち合わせていない。
一度ギュッと目を瞑り、意を決して言葉を押し出した。
「僕の年齢は28で、千彩とは…一緒に暮らしてます。一週間ほど前に、歌舞伎町で知り合いました」
「ほんなら…千彩の客…ってことですか?」
「いや、そうじゃないです。たまたま泣いてる千彩を見つけて…それで自分の家に連れて帰ったんです」
「…え?」
「黙って連れて帰ったから、店の人は探してるかもしれません。すみません」
俯く晴人に、吉村はバンッとテーブルを叩いた。
「ほな、千彩を助けてくれはったんですね?ありがとうございます!」
「いや…そんなつもりはなかったんですけど…」
「いやいや!恩人ですわ!ありがとうございます!その上一緒に住まわせてもろてるやなんて…えらいお世話になってすんません」
恩人だと手放しで喜ぶ吉村を見て、晴人の想いは余計に複雑に絡まってくる。
疚しいことはない!…とは言いきれないけれど、まぁ、まだ抱いてはいない。けれど、気持ちの面ではどうだろうか。
まだ17歳の、あんなにも真っ白な少女相手に、手放したくない、自分だけのものにしておきたいと願うこの気持ちは、本当に疚しくないと言えるだろうか。
頭を悩ませる晴人に構わず、吉村は言葉を続ける。
「俺ね、ちょっと仕事で長い間家空けてもうて。久しぶりに帰ったら、預けてた家に千彩がおらんのですわ。誰に聞いても知らん言いやがるし、地元帰っても見付からへんし…ずっと探し回ってたんですよ」
「そう…ですか」
「いやぁ、ええ人に助けてもろて良かった。これで漸く地元に…」
吉村の言葉を遮るように、タイミング良くノックの音が響く。それに慌てて反応したのは、言わずもがな晴人で。
「いい?姫連れて…あっ!姫待って!」
「はるここー?」
顔を覗かせた千彩の姿を見て、ガタンと二人が立ち上がる。
「ちー坊!」
先に駆け寄って抱き締めたのは、その姿が現れるのを今か今かと待ち焦がれていた吉村だった。
「ちー坊!ごめんな?ごめんな?辛い思いさせて悪かったな。許してな?」
「…え?」
戸惑う千彩の頭を撫でながら、吉村は感極まって泣き始めた。それをただ眺めているだけしか出来ない晴人は、嗚呼…と声にならない想いを吐き出す。そして、そんな晴人を眺めるメーシーも。
「ちー坊…俺の可愛いちー坊。お前は俺の宝物やで。もう絶対離さへんからな」
「おにー…さま?おにーさま!」
「せや。おにーさまや。お前を世界で一番愛してるおにーさまや」
腕の中の千彩が、何度も「おにーさま」と呼びながら同じように泣き始めて。これはいよいよダメだな…と、晴人はガックリと肩を落として椅子へ腰掛けた。