いとしのくまこさん
気が付いたらもう三十路をむかえていた。


中途半端な気持ちで小学生から高校生まで扱う学習塾の仕事に就いていた。


きらびやかな教師という素質はゼロ。


かえって裏方である事務職のほうが気楽だった。


塾からみたら事務職なんてただのふきだまりしかみえないのかもしれない。


受験していたときに役立った塾の問題集を自分が手がけることに恩返しができてうれしかった。


仕事ぶりを評価してくれたのは、今の上司、十歳も歳の離れた滝川部長だ。


仕事のことを相談していくうちに、親密になるのには時間はかからなかった。
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