いとしのくまこさん
欲求から解放される前に、いつも滝川部長のほうが先に到達してしまう。


わたしはしかたなく滝川部長の体から自分を引きはがした。


呼吸を整え、何も身につけぬまま台所に立つ。いつもならシンクにあふれかえる食器や食べ残しの弁当の類がきれいになくなっている。


冷蔵庫を開けた。扉の内側に刺さっているミネラルウォーターのペットボトルを二本抜いた。


ペットボトルがあった場所の隣には、飲んでいるブラックコーヒーの缶と甘ったるいカフェオレの缶が置かれていた。


確か甘い飲み物は好きじゃないって言っていたはずだったのに、味覚でも変わったのだろうか。
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