いとしのくまこさん
「あの人で十分なんて言わせないからね」


「またそのことですか。十分なんで」


「まーた十分って。ちゃんとイイ恋愛したほうがいいわよ」


「イイ恋愛っていったってね、困るわよ」


「どこかに転がっているかわかんないわよ」


「近くにあるって? ないない、そんなの」


「女捨てるようなことしちゃだめよ。恋はトキメキよ、トキメキ」


「はいはい、激励ありがとうございます。これから教科担当との打ち合わせがあるんでこの辺で」


「カオルコちゃんも夏期講座の問題集作成がんばってね」


篠崎さんの声に癒しをもらいつつ、電話を切る。


さっきまで座っていた伊吹くんがいない。


急いで机の上に散乱している資料をかき集めて会議室へと走っていった。
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