いとしのくまこさん
ふっ、と部屋の電気が消えた。きゃあという乾いた悲鳴をスタッフたちが上げる。


部屋の窓の外には大粒の雨粒がたたきつけられていた。


「もしもし、もしもし!」


伊吹くんは何度も電話に噛みつくように声を荒げている。


電話のプッシュボタンを押しても呼び出し音が聞こえてこない。


「停電って……。こんなときに」


伊吹くんは受話器をたたきつけるように置いた。


わたしは非常口の明かりを頼りに入口にある防災グッズの中から懐中電灯を取り出す。


戸棚からバックアップ用の理科と社会の2教材のデータが入ったDVD-Rを引き抜く。
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