いとしのくまこさん
先に出ていった伊吹くんは営業部から営業車の鍵を借りて通用口の前で待機していてくれた。


助手席に飛び乗る。


会社の前に植えられた街路樹は雨と風によって葉や枝を大きく揺らしていた。


「17時配信ですよね」


「間に合ってくれればいいんだけど」


車内のデジタル時計は16時を知らせていた。


車のフロントガラスを雨粒が打ち付ける。


ワイパーで雨水をぬぐっているのだが追いつかない。


信号機も街灯も真っ暗なまま、慎重に発進していった。
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