いとしのくまこさん
本社ビルからバイパスを使って北進していく。


雨は引き続き降り続いていたが、街灯も信号機も光を放っている。


「学習塾の看板があるでしょう。あれを左に曲がって」


「わかりました」


バイパスから少し細い道を通る。


商業ビルの間に立つ、1階から2階までは学習塾の教室が入る五階建て本社ビル分室が姿をあらわした。


「車置いてきますから、熊井さん先に」


「ありがとう」


車のドアを開けた。水たまりに足が浸かり、パンプスのつま先から雨水が入る。


資料に雨がかからないように気をつけながら建物の中に駆け込む。


入口には傘の柄が壊れたビニール傘が転がっていた。
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