いとしのくまこさん
カウンターから奥にある、パーテーションで区切っただけの応接室に通してもらい、お茶を入れてくれた。


「それだけカオルコちゃん、根に持たれてるんじゃない?」


「そんなことないと思うけど」


「だってヒメってさあ」


伊吹くんがきょろきょろとわたしを見ているので、コホンとわたしが咳払いをした。


「まあ、いいけどね」


「あ、あれ……」


ジャケットのポケットをまさぐっている。伊吹くんは青ざめていた。
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