地のさがしもの
実際、神波は小さい頃からこんなに不真面目だったわけではない。
昔はちゃんと真面目に、サボることなく続けていた。
しかし、真面目すぎたゆえにできすぎてしまった。
天性の才能もあり、いろんな稽古を積んでいくと、すべて1ヶ月余りで全てできるようになってしまったのである。
それも、ただできるようになったのではない。
全てを、完璧にこなした。
だが、ただでさえお嬢様というレッテルを貼られていたのに、全てに優れた才能を持った神波は、やがてさらに大きな重圧を受けることになった。
茶会に顔を出せば完璧を求められ、少しでも失敗すれば落胆される。
舞踊を踊っても、1番でなければコソコソと陰口を叩かれる。
「もう、うんざりなんだよね。」
ボソッと呟いた言葉は、静かな春の空気に溶けていった。