魅せられて
第一章
大理石が張られた
光沢のある手洗い


壁一面に埋め込まれた鏡


不必要に広い空間


鞄から取り出した
化粧品ポーチから
ルージュを掴み


紅を惹き
溜息をついた



数分前
待ち合わせ場所に
姿を現さない男から
身勝手な電話が
入った


「悪い 仕事が終わりそうにない」


よくある話


腐る程ある
言い訳など
聞き飽きたわ



私からの返事は

”さようなら”


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