魅せられて
最終章魅惑


これ以上に
満ち足りた事はない私は
妖艶な姿で
BARの扉を開き


振り返る男性客の視線を
纏いながら
悠然と迷いもなく
高梨の横に座った


無表情のままの高梨


褒め言葉もなく
酒を口に含む


私は一瞬にして
シンデレラの魔法が
消えた気がした


輝くネイルも
柔らかな髪も
そのままなのに


高梨は興味を示すどころか
つまらなそうに
ライターを鳴らしている


女って愚かね


時として値踏みを
間違える


私は何故
引地の言葉を
上手く解釈が出来ないのだろう


『女性客に興味を示したのは
 響子が 初めてだよ』


何処にでも居る
輝く女性では
興味を示さないと言う
意味だったのよね


高梨が興味を示したのは
髪を燃やす
『鈍臭い女』


輝こうとムキになる
見っとも無い私


そう言う事なのね


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