魅せられて


私は色気もなく
大袈裟に溜息をつき
無邪気に笑いだしてしまった


耳に飾りつけた
揺れるピアスを外し
カウンターに置く


「結構 邪魔なのよね
ピアスって」


無造作に置いたピアスを
指先で摘み上げた高梨が
鋭利な止め具を観察し


「体の一部に貫通する代物を
 よく身に付けられるよ」


「あらピアスなら
引地さんもしてるじゃない
 単なるお洒落よ
 
 耳に挟むイヤリングの方が
 鬱血したり痛いのよ」


肩を竦めた高梨が
ピアスを興味なさ気に
カウンターに落とす


「意外と高梨さんって
 痛がり?」


私は悪戯に笑って
高梨の顔を覗き込むと
何を照れたのか赤面した高梨が
無表情の顔のまま
いつも通りに強がって見せる


「うるせぇよ」


可愛い男
気難しい癖に
だらしなくて
感情をコントロールするのが
異常に下手くそなのね


きっと不器用過ぎるのよ


多分 高梨は
奥様が怒っている理由を
わかっていないわ


奥様も高梨の事を
愛しているのね


高梨の壷を
しっかり握っているもの


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