魅せられて


琥珀色の酒が
蕩けるように
甘く


味を楽しむ余裕さえある


煙草に火を燈し
舞い上がる煙を
眺め


ほんの少し
傾けたグラスに
唇を寄せて


肩から滑り落ちた髪を
軽く指先で掻きあげる


不自然ではない
優雅な仕草も
無意識な癖になった


「お会計してくれる?」


バーテンダーに告げて
ゆっくり酒を飲みながら
引地に軽く挨拶をした


「今日は ありがとう」


引地も社交辞令な
挨拶を返す


「またね」


私は無邪気に微笑んで
見せたわ


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