魅せられて


カウンター奥にある
化粧室へ行く時


少し酔ったふりをして
高梨の座る椅子の背凭れに
何度か手を掛けたけれど


一度も振り返らず


背中越しに
視線を送っても
気に掛けもしない


私の存在に
気付かないふりを
しているの?


それとも
私と言う女には
興味がないの?


同じ空間の中に居て
寂しくなるのは
何故かしら


笑顔が欲しい訳じゃないの


私に興味を持って欲しい訳でもない


高梨の視界に
映りたいのよ


見つめられたい訳でもない


常連客達に
何度「響子さん」と
呼ばれても


物足りなさだけが
次第に増していった


< 19 / 116 >

この作品をシェア

pagetop