魅せられて
カウンター奥にある
化粧室へ行く時
少し酔ったふりをして
高梨の座る椅子の背凭れに
何度か手を掛けたけれど
一度も振り返らず
背中越しに
視線を送っても
気に掛けもしない
私の存在に
気付かないふりを
しているの?
それとも
私と言う女には
興味がないの?
同じ空間の中に居て
寂しくなるのは
何故かしら
笑顔が欲しい訳じゃないの
私に興味を持って欲しい訳でもない
高梨の視界に
映りたいのよ
見つめられたい訳でもない
常連客達に
何度「響子さん」と
呼ばれても
物足りなさだけが
次第に増していった