魅せられて
やっと手に入れた自由
諸橋から解放された
充実感
制服を脱ぐと
年甲斐もなく
嵌めを外したくなる
諸橋との約束がない限り
ピアスさえ取替えなかった私
鞄の中には 通勤途中に読む
単行本を数冊入れ
押し込められる電車に揺られ
自宅へ直行していたなんて
考えられないわ
週に何度も
自宅へ通って来ない男の為に
部屋を隅々まで片付けて
愛読書が料理本
ストレッチをしながら
姿見の前でボディラインを確認し
念入りに肌の手入れをして
溜息をつく
”このままで いいの?”
鏡に映り込む
自分に問い掛けてきた
収入の安定した諸橋と
結婚してしまうのも
悪くはないけれど
結婚生活が
想像もつかないなんてね
会社を出て
タクシーに乗車してから
まず 最初にする事が
諸橋からの着信履歴を
確認する私は
やっぱり矛盾してるのかしら