魅せられて


余韻に浸るように
諸橋から送信された
古いメールを読み返す


カウンターに肘を立てて
頬杖ついたまま


照明に照らされ
反射するグラスが
微かに輝き


指先に挟んだ煙草が
細い煙りを揺らめかせ


『今 会社を出た』

『8時に駅前で』

『残業 また連絡する』


事務的な報告メールを
何通か眺め
苦笑い


携帯電話を閉じると同時に
隣りの席に座った引地が
外気の空気を纏い


「彼氏からメール?」


私は 照れ笑いをして
曖昧に誤魔化していたわ


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