魅せられて

第五章優遇

GIVENCHY
Into the blue


横に座る引地から
漂う香り


嫌味もなく
男に色気を添える


香水の陳列する棚で
引地の匂いを嗅いだ時
品名を確認していたが
半信半疑に


「GIVENCHY？」


何気なく問い掛けると
引地は戸惑いもなく
頷いて見せる


正解だと知った所で
何がある訳でもないのだが
男性から香水を頂いた時の記憶が
蘇った


「男性って匂いに敏感な方？」


引地は グラスの氷を鳴らし
カウンターに置く


「擦れ違った時
　女性的な香水が漂うと
　振り返る事はあるな」


ロックグラスの中で
氷が蕩け
透明の液体が揺らめきだす


「香水って不思議なの
　同じ香水なのに
　人肌の体温とかで
　匂いが変わるのよ」


引地は納得したように
軽く数回頷きながら


「確かに振り返った時
　ガッカリした事は
　あまりないかも知れないな」


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