魅せられて


私は 少し感傷的に
昔話を語り始める


何故 引地に話したのか
わからないけれど
なんとなく話してみたくなったのよ


多分 引地から漂う
香水のせいね


「男性から香水を贈られた事があるの」


引地は興味深くもなく
曖昧は返事を繰り返しながら
耳を傾けてくれる


「私には似合わない香水でね
 嗅いだ瞬間 嫌気が刺したわ

 ブランド品の香水だとしても
 私を見ていない気がしたの」


煙草の煙りを吐き出した引地は
何気なく補足する


「男は女性の香水に
 詳しくはないよ
 女性に似合う香水を選べる方が
 珍しいと思うけどね」


私は軽く溜息をつき


「確認をしないで購入したって意味?」


煙草の灰を灰皿へ落とした引地は
煙草をくわえ


「瓶のデザインとかで
 決める事もあるかもな」


面倒臭そうに
煙草をくわえたまま
煙りを吐き出すと
引地の煙草の匂いが
香水の匂いを消し去っていた


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