魅せられて
引地はカウンターに肘を付き
女性の方へ身体を向け
軽快な会話を楽しんでいる
女性の笑い声に
便乗したり
私には見せない
引地の意外な一面
軽薄そうな男
時々 チーフを交えて
会話を繋ぐ事はあるが
カウンター客とは
別世界の雰囲気を凝固する
軽蔑まではしないけれど
癇に障る態度は
引地らしくない
”紹介くらいしてくれても
いいじゃない”
そんな事を考える私は
引地を 心のどこかで
依存しているのでしょう
私は 自分の狡さに
気がついたわ
高梨の話題をした時
グラスを鳴らし乾杯をした時点で
引地の加護を得ようとしたのかも知れない
先の見えないゲームを
見守って貰えると
勝手に解釈し
引地に寄り掛かりながら
ゲームに挑もうとしていたのね
私は愚かさに苦笑いしていたわ