魅せられて
第七章融通
久しぶりの雨
乾燥していた空気が
浄化されていく
雨の為か
店の客足も悪い
カウンター席は
殆ど空席で
引地の姿もなかった
気が引けたけれど
カウンター隅に座る
高梨の斜め前の席へ
腰を下ろせたのは
ほんの些細な勇気
笑顔で迎い入れられなくても
グラスを傾けた高梨の視線が
一瞬 私を見ただけで
十分な挨拶になる
居心地が悪い癖に
傍に行きたくなるのは
やはり引地がくれた
キッカケのお陰なのだろう