魅せられて
会話もなく
過ぎてゆく時間は
滑らかで
思考能力まで
停止してしまう
無言の時を恐れ
話掛けなくても
男性と過ごせるなんて
知らなかったわ
諸橋と居る時も
無言の時間を過ごす事が
あったけれど
ただお互いに
興味がなかっただけ
必要以上に会話を好む男でもなかったし
話す事も なかったのかも
知れないわね
「私ってどんな女に見える?」
諸橋には聞けなかった言葉
何故 高梨には聞けたのか
わからないけれど
素直に言葉が出てしまった
首を捻る高梨は
感心なさそうに
トングで氷を掴み
カランとグラスへ落とし
掠れた声で囁いた
「的確な判断を隠す女」
平然とした顔で
私を見抜いているのね
嫌になる
少しくらい
私にも余裕を与えて
欲しくなったわ
融通の利かない男