魅せられて
第八章妖艶


獰猛な陽射しを
浴びせる日中


冷房の利いた
オフィスを出た頃には
照りつけられた道路が
熱を佩びていた


蒸された湿度に
容赦なく汗が
滲み出てくる


時計の針は
午後七時を示し
男性であれば
居酒屋で一杯
引っ掛けている時間帯なのだろう


BARの開店時間だとしても
来店するには
まだ早すぎる


洒落た喫茶店風のレストランで
洋酒をオーダーする事も
可能だが


汗を拭いながら
酒を飲むのは
なんとなく気が引ける


BARの近辺を
浮遊し辿り着いた場所は
高梨と訪れた
小さな桜の木


小さな青葉を
枝先に芽吹き始めている


沢山の生活音が
混ざり合う
桜並木で耳を澄ませていると


何処からか
聞き慣れた男性の声が
耳へ届いてきた


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