魅せられて


震えが 止まらなかった


鏡の中の私が
作り笑顔のまま
引き攣っている


心臓の鼓動が
耳の奥で木魂し
体内を駆け巡る血液が
脈を打ち鳴らす


私は女だと言う理由で
男なら誰でも
女性には敵意を示さない生き物だと
決め付けていたのよ


テレビ画面の中で
報道される女性殺害の事件は
正気を失った男が
怨恨の末に殺害するものだと
思い込んでいた


まるで無差別殺人の
犯人のように


沸々と浄化できない
複雑な感情を
押し殺す程


奥様を愛している…の?


私の存在など
脆く崩れ堕ち


高梨の感情など
押さえ込もうとしていた
女ならではの
汚い手を使った事が


酷く惨めに思えた


< 77 / 116 >

この作品をシェア

pagetop