魅せられて


窓硝子越しに
備え付けられた
カウンター席


背後から声を掛けられ
振り返ると
岡田の姿が あった


出逢った時と同じ
背広を着た初老の男性
若者の多いワインバーでも
見劣りしない雰囲気がある


私が席を立ち頭を下げると
岡田は私の肩に手を掛け
改まった挨拶は必要ないと
軽く首を振った


「ワインは お好きですか?」


岡田は私の隣席に座り
ワインリストを広げ
私の答えを待たず


「この店は 結構いいワインが
 揃っているんですよ
 私の独断で決めてもいいかな?」


月並みのワインしか
飲んでいない女性への
気遣いが上手い


またワインを注文する事で
時間を気にせず
付き合ってくれる意味も含め
岡田に問わなくてはならない
質問の答えが
短縮された気がする


「ありがとう 岡田さん」


岡田は微かに
品のいい笑みを浮かべた


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