魅せられて
突然呼び出した理由も聞かず
オーダーしたワインの素晴らしさを
語ってくれる岡田
ワインの醍醐味ではなく
熟成された地名の環境や
簡単な歴史を紐解いてゆく
私は岡田の滑らかな声に
惹き付けられるように
聞き入ってしまった
運ばれたワインが
幻の一品でなくとも
岡田が密やかに
言葉の魔法を施したワインは
極上のワインに変わり
正式なワインの飲み方など
わからない私は
岡田の真似をしながら
ワインを口に含み
「…美味しい」
まるで 初めてワインの味を
堪能した少女のように
目を丸くして
素直な感想を漏らしていた
岡田の優しさに
甘えきってしまいそう
30代半ばの女が
20代前半の女性のように
無邪気な笑顔を見せ
ボトルのラベルを
眺めている私の横で
優雅にワイングラスを回す
岡田の姿が
窓硝子に映りこんでいた