魅せられて
第十章優待


駄目な女


高梨の事が
頭から離れない


初歩的なミスをしてしまうくらい
仕事が手につかないなんて
重症かも知れない


社員の前で
こっぴどく怒鳴られた私は
立ち直れない程
落ち込んでいた


化粧室で他愛ない会話をしている
新入社員の若い子達の言葉も
私を嘲笑っている感覚に
陥ってしまう


卑屈になっていたの


慰めてくれる
同僚の男性が
気を遣って
”どんまい”なんて声を
掛けてくれるけれど


うだつの上がらない
同僚の出世を
馬鹿にしていた私


所帯を持って
お子さんまでいる同僚を
見下していた事に
恥ずかしくなる


結婚披露宴に出席した時
同僚の横で微笑む花嫁が
何も取り得のない
平凡な女性に見え


つまらない結婚をしたものだと
馬鹿にしていたわ


”どんまい”


肩を叩き笑顔をくれる
同僚の良さを
私は見抜けずに


ただの
行き遅れになっていた

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