魅せられて
別居をしている高梨
どんな恋愛をして
奥様と結婚したのかしら
冷め切った夫婦愛
それでも
高梨を突き動かす
奥様がいる
憎しみあいながらも
一途の愛を貫く男
奥様と喧嘩したくらいで
取り乱すなんて
見っとも無いわと
嘲笑ったのは私
『暗中模索?』
馬鹿にした言葉を
高梨に投げつけて
逃げ出したのも
私なのね
私は…
”私の存在は何?”
そんな事ばかり
身勝手な感情を抱いて
嫉妬していた
ランチを共にした
同僚の友人が寿退社をした時
ふざけて書いた辞表が
デスクの引き出しにある
あれから何年経つのかしら
ネームプレートに刻まれる
”主任”の文字
ミスを犯した資料を
修正しながら
刻々と退社時間を過ぎ
帰宅する社員を見送り
この仕事が片付いたら
BARへ行こうと
決めていた
浮かない顔のままでもいい
これが私だもの