魅せられて
「私 昔から要領がいいの
覚えが早いと言った方が
いいのかも知れないけれど
あまり失敗した経験がないのよ」
勉学にしても
テスト前に焦って勉強もせずに
いい成績を収めてきた
運動神経も悪くはなく
トレーニングを重ねなくても
大概の種目はこなしてしまう
「何度も同じミスをする
若い娘を指導しているとね
本気で覚える気はあるの?って
腹を立てた事もあるわ
結婚するまでの手抜き仕事に
男性社員の品定め
何しに会社に来るのかしらと
馬鹿にしていたの」
微かに引地の口角が
上がる
愉快でしょ
女の愚痴なんて
この程度なのよ
ワイングラスを回していると
高梨がポツリと
言葉を漏らし
「サラリーマンの親父かよ」
無表情の高梨が
笑顔を見せた