魅せられて
私は酔いに任せて
妖艶な女性を
演じる気もなく
ふざけた笑みを見せながら
引地の顔を眺め
「オッサン化した女を
送って頂けるかしら」
引地は後ろめたさもなく
白い歯を見せて
笑いだし
「同行しましょう」
会計を済まし
私の手を引く引地が
車道を流れるタクシーに
手を上げた
運転手に行き先を告げた私は
通り縋りに点滅する
ホテルのネオンを眺め
「空いてるホテルに
入ってくれる?」
無言のまま
拒否をしない引地は
相変わらず香水の匂いを
振り撒いて
微かに手が
私の手に触れている
暖かな温もりが
全身に伝わり
脳を麻痺させていたの
男性をホテルに誘ったのは
初めての経験
引地は断れない男性ではなく
求める女性を
受け止める男なのだと
気付いていたわ