理想の恋愛
「はい、みなさんおはよう。」


校門には一人の教師が立っていた。


「おい、見ろよ。
アナゴさんがまた株売ってるぞ。」


校門前で挨拶をしている教師は遠山(トオヤマ) 信久(ノブヒサ)ことアナゴさんだ。
アナゴさんといううニックネームは和磨がつけたものだが、今では桜南高校の全生徒からそう言われている。
ちなみにニックネームの由来は、唇がタラコ唇なことと、声が毎週日曜日にやっている某アニメのサ○エさんに出てくるアナゴさんにそっくりだからである。
一時期、家の校長が声優をしているんじゃないかと噂されたほどである。




「先生おはようございます。」


いつの間にか麗がアナゴさんに挨拶をしていた。


「うむ、おはよう。
麗君は今日も元気だな。」


麗は何故か学校ではそれなりの有名人でほとんどの先生に名前を憶えられている。
和磨の話では校内で行われている美少女コンテストでベスト3の常連だからとのことだが・・・。
俺は今までそのようなコンテストが行われているのを見たことも聞いたこともない。


「よく、やるよなー。アナゴさんも。」


アナゴさんは用事がないときはいつも校門前に立って生徒に挨拶をしている。
事情を知らない1年生と2、3年生の極一部の無知な奴から見たら熱心な教師なのだろうが、事情を知っている俺や和磨からすればただの悪あがきもいいとこなのである。


「実ー!和磨くーん!早く行かないと遅刻扱いになっちゃうよー?」


麗が大声で呼んでくる。


俺と和磨は小走りでアナゴさんの横を通りぬけて行った。

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