嘘つきな唇
びっくりしすぎて危うく叫んでしまいそうになった。

驚きすぎて動揺を隠しきれず、目を大きく見開いた紗綾を見て、部長の後ろから顔を覗かせた『彼』が右の口の端だけを上げる。

「な、」

なんで────

なんでここにいるの!


「藤村?」

蒼士の声にハッと彼を見上げるも、途端に眉を下げ、泣いてるんじゃないかと思うほどに揺れる瞳を見せた紗綾に、蒼士も困惑する。

「おや、もしかして知り合いかい?」

そんな緊迫した空気の中で入り込む部長の呑気な言葉。

「知り合い?••••そうなのか?藤村」

どこか不安げに揺れる蒼士の声。

「あ、えっと•••」

普通に応えればいい。同じ大学出身だっていうことはきっと部長も、もちろん蒼士も知ってることだから。

知り合いだとしても何らおかしなことではないのだから。

そう思うのに、上手く言葉を紡げない。



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