嘘つきな唇
そんな紗綾の心の声に気づいているのか、どうなのか。

紗綾の代わりに口を開いたのは、入社したばかりの新入社員。


「はい。そうです。大学時代、サークルが同じでした。───紗綾先輩、お久しぶりです。よかった、知ってる先輩の元で仕事ができて」

にっこりと邪気のないように見える笑顔を見せた彼に、紗綾はくらりと眩暈を起こしそうになる。

「え?そうなのか?」

蒼士は目を丸くして驚き、さっきからずっと一緒にいるというのに思わず新入社員を凝視してしまった。

「•••••••」

ああ。いまここで気を失いたいと紗綾は本気で思った。

会いたくなかった。
会おうとも思ってなかったのに。

忘れかけていたはずの傷が疼く。

なんで。

なんで今さら────









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