嘘つきな唇
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休憩室に向かう紗綾の背中を見つめながら蒼士は口を開いた。

「•••藤村とは随分親しいようだけど」

その問いに拓斗は左眉を上げて、これから上司になる蒼士に視線を向けた。

「サークルが同じだけですよ。学年も違いますし、それほど親しくはないと思いますけど。そんな風に見えました?」

「•••いや、まあ、藤村のことを、その、名前で呼んでいるようだし」

大学時代の知り合いとはいえ、蒼士にとってそれは決して好ましくないことだ。

冷静に装おうとしていたつもりでも、二人の関係が気になってしょうがないのも事実。

「名前ですか?あの頃、サークルのメンバーはみんな先輩のこと、そう呼んでました。だからつい。あ、やっぱりダメですか」

拓斗は悪戯っ子のように舌を出して笑うと、肩を竦めた。

もちろん、それは嘘じゃない。

実際、あの頃、サークルのメンバー誰もがそう呼んでいたのだから。








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